前に住んでいたアパートは、ドアを開けると目の前に大きな桜の木があった。
どんなに憂鬱な朝でも、外に出た瞬間に満開のピンクの花が迎えてくれたら、なんだか励まされたような気持ちになれた。
「この景色、写真に残しておきたいな」
そう思っていたにも関わらず、たいてい外に出るときはいつも急いでいて、「あとでいいや」と先延ばしにした結果、あっという間に見頃を過ぎる。
満開になったと思えば翌日に大雨が降ったりと、桜の命は短い。
今の家に引っ越す年の春、「ここでみられる桜は最後なんだ」と思うと、急に寂しくなった。
結局撮らずにさよならしてしまったけれど、あの団地の庭で皆の目を楽しませていただろう大きな桜は、記憶にずっと残っている。
「じゃあ、いってくるね」と言う夫を見送る時に、背景に見えた満開の桜。
あの瞬間がすごく好きで、でもお互い朝に余裕がなくて、写真なんて一枚も撮らずに見納めになったことを今でもちょっと悔やんでいる。
けれども。
最後の満開の日の朝に、「覚えておこう」と目を凝らして脳裏に焼き付けた一瞬は、今でもはっきりと思い出せる。
写真は好きだ。できることなら見たものを全部残しておきたい。
だけど、忘れないようにと見つめたものほど、写真がなくても鮮やかに思い出せる。
いつか忘れてしまうかもしれないけれど、こんな風に頭の中でだけ記憶しておくことも、写真を撮るのと同じくらい大切にしたいなと思う。
暮らしのエッセイ、結婚について
「理想のカタチ」に当てはめないことで、心地よい暮らしをつくる。
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