10年前の約束を守ろうと、あるドライブインへ訪れたひとりの男性。
アメリカンダイナーのような、真っ赤なソファが眩しいドライブイン。快活で気さくなマダムがひとりで営む店に、今日はただならぬお客が集まる。
キリリと美しい女社長や、若くてかわいいのに、どこか掴みどころのない女性。
物語の登場人物は、たった4人。旅の一夜を見守りながら、音楽を奏でるバックバンドの豪華絢爛さ。
それぞれの思惑がすれ違う、ほろ苦い夏の恋のような、淡い期待の行く末に惑わされる。
大人だから、大人だけど、いろいろあるでしょう?だから今夜くらいは、全部忘れて朝まで楽しもう。
そう、明日になればまた、現実と向き合う日が始まるから。
〈君の輝く夜に~FREE TIME SHOW TIME~ 〉とは
2018年夏に京都劇場で上演された〈君の輝く夜に~FREE TIME SHOW TIME~〉。
喜劇作家の鈴木聡さん、ジャズピアニストで作曲家の佐山雅弘さんとジャズバンドの生演奏で繰り広げられる舞台〈恋と音楽〉シリーズの面々が再びおくる、上質なオリジナルミュージカルです。
出演は稲垣吾郎さん、安寿ミラさん、中島亜梨沙さん。北村岳子さん。華やかな音楽劇を盛り上げるジャズバンドの皆さん。
まさか1年後に東京で再演してくれるとは思わなかったのですが、昨年11月に音楽監督をされていた佐山雅弘さんが逝去され、追悼の意も込めた再演とのこと。
ということで、8月30日から日本青年館で上演されている公演を観てきました!
夏の夜、4人の男女が偶然出会うダイナー
かっこいいのに、なんだか夢見がちな男性を演じるのが稲垣吾郎さん。すらっとした佇まいに魅了される、女社長の安寿ミラさん。コケティッシュな振る舞いの中島亜梨沙さん。どんなお客さんも温かく受け入れるドライブインのマダムを演じる北村岳子さん。
ワケありの4人が偶然出会う、夏の夜の出来事。
…というと濃密な大人の恋の話っぽいですが、全然違います(笑)
コミカルでキュートな、ちょっと切なくなるストーリー。真夜中の変なテンションで話すお喋り。このまま夜でいてくれたらいいのに、と願いながら夜が明けていき、現実に引き戻される朝焼け。
でも、昨日の自分と違うと感じるのは、いつしか日常で抱えていた荷物が軽くなっていたから。
ミュージカルではありますが、いわゆる「ザ・ミュージカル!」という感じがないので、ミュージカルが苦手な方も引き込まれる作品。
なぜかというと、作家の鈴木さんも主演の吾郎さんも、派手なミュージカルを自分たちでやるのは抵抗があるので等身大で楽しめるものを目指したから。(参考:稲垣吾郎×鈴木聡が語る、佐山雅弘の音楽とジャズが舞台にもたらすライブ感)
ミュージカルを見ててありがちな「なんで急に歌い出すんだよー!」ってツッコミを入れたくなるシーン(すみません)が一度もないことにも、個人的に驚きました。自然に歌に入る感じがいい。
ストーリーを作る鈴木聡さんは、吾郎さんに当て書きされているので、「わたしたちが想像する稲垣吾郎」の延長上にいるキャラクターがベースに感じられるんです。
4人の声のハーモニーがとてもきれいなんですよ…!吾郎さんの甘く伸びやかな歌声を存分に味わえるのはもちろんですが、脇を固める女優さんも豪華。元宝塚の安寿さんと中島さんや、劇団四季出身の北村さん。
ダンスのしなやかさ、指先まで魅せる美しさに圧倒されました…!
先日、KERAMAP「キネマと恋人」の観劇後に、たまたま中島亜梨沙さんをお見かけしたのですが、想像以上に小柄な方で、ひそかに驚きました…!舞台で拝見したときの存在感の大きさが印象的だったので…!俳優さんてすごい…!
幕間にはショータイムも
ステージは3部構成で約2時間の上演(途中休憩なし)。前編では昼間から夕方までを描き、幕間のショータイムでは4人が歌い踊ります。選曲はスタンダードナンバーや80’sで、曲名を知らなくても「これ知ってる!」と思うものばかり。
個人的には、吾郎さんの歌うボサノヴァの名曲「イパネマの娘」がたまりませんでした…!日本語の歌詞はなかなか歌いにくそうでしたけど…!声量を出しても柔らかく聞こえるのが吾郎さんの歌声の良さですよね…うっとり。それぞれの魅力が伝わる選曲が素敵でした…!
いろいろ書きたいけど、他はこれから観る人のために内緒にしておきます!(気が向いたら終演後に更新します)
ショータイムが終わると、後半へ。前回よりもショータイムのボリュームを増やしたことで、構成も結構変わっていたような。後半は夜が開けていき、吾郎さんと安寿さんの駆け引きの時間へ。大人なのに、大人気なく、格好いいのに格好悪い人間味がそれぞれ出るシーン、リアルで良かったですね。
今回は2階席で表情がよく見えなそうだったので、家にあった双眼鏡をちらほら使ってたのですが、思った以上にコミカルな表現に振り切ってて、めちゃくちゃ面白かったです(笑)
中島さんの突き抜けたピュアさも、北村さんのコミカルな演技(観客の期待に応えまくる姿…!)といい、全員から目が離せません。ああ、DVDと音源配信して…!
SPONSORED LINK
カーテンコールではフリートークも
約2時間の上演後、最後に吾郎さんが出てきてトークしてくれるというおまけつき。
Twitterで拝見したのですが、チケットやグッズ販売のPRで「お金はいくら使っていただいても構いません!」と発言したそうで、 めちゃくちゃニヤニヤしました(笑)潔くて好き…!
宣伝することに謙虚さがつきまといがちな日本ですが、笑いをとりつつまっすぐにアピールするところ、個人的にとても好きです…!
観客いじりがお上手で、「席立ってる人と座ってる人がいて、でこぼこしてますね〜。あ、でも急に立つとぎっくり腰になっちゃうんでいいですよ!」とか、「大親友のヒロくんが来てます!」と紹介して観客が後ろを向いて探し出せば「僕を見て!」と返したり。
「今日は昼公演のみなので、これからロゼワインを片手にバーニャカウダでも作ろうかな?」っていうキャラが立ちすぎる発言も、ファン心をくすぐりますね。
「みなさん最初の頃よりもフェロモンが出てませんか?押し返さなきゃ!って押し返したらダメか(笑)」って…愛ある客いじりがすごい!上品な毒蝮三太夫さんみたい(笑)
最後には、来月オープンするカフェをPRしつつ、「皆さんのおかげで夢が叶っていきます」と満足そうな笑顔が見られて、ファン歓喜でした。彫刻みたいに美しいのに、トークで魅せる茶目っ気たっぷりの姿のギャップもたまらん…!(興奮して精神が崩壊しました)
そうそう、開場時間に行ったところ、ロビーの入口に立つSMAP &新しい地図のマネージャーさんがいらしてて、かなりびっくりしました…!お客さんをニコニコと嬉しそうに迎えてらして、自然と会釈してしまいました。心の中でありがとう、って思いながら。
国民的スターのマネージャーさんなのに、その佇まいからお人柄が伝わってくるようで。わざわざ入口に立って迎えるってすごいことだと思います。
話が逸れてしまいましたが、何度も観たくなる特別なミュージカル。夏の一夜を題材にしつつ、テーマは人生応援歌。
そう、人生はいつも旅の途中なんです。悪いことがあっても、その次にはきっといいことが待ってるから。お休みをもらって、全部忘れたら、きっとまた新しい1日を過ごせるはず。
公演は9月23日まで。夜の部はまだチケットが買える公演があります!当日券もあるとのことなので、詳しくは〈君の輝く夜に~FREE TIME SHOW TIME~〉公式サイトへ。わたしももう一度行きたいよ!
関連記事:人生の折り返し地点で、これまでとこれからを考える〈半世界〉
「描いた人生になってる?」東京国際映画祭2018で『 #半世界 』を。