「はい、おまけ」と、カウンターに置かれたのは小さなアヒルのフィギュアだった。
衝動的にそばが食べたくなり、浅草橋駅の高架下にある立ち食いそば屋の暖簾をくぐる。
それもこれも、平松洋子さんの「そばですよ。」を読んだからだ。
喫茶店と同じで、サラリーマンやおじさんの憩いの場所にお邪魔させていただく、という心持ちでいるので、暖簾をくぐるときはいつも緊張する。駅ナカの立ち食いそば屋なら気負わず入れるけれど。
それで、浅草橋の〈ひさご〉へ。
4人も入ればいっぱいになりそうな小さな店は、外から様子を伺うことはできない。
平松洋子さんが絶賛していた冷やしそばがどうしても食べたくなり、平日の早朝に駆け込んだ。
予想を裏切るほどの美味しさにうっとりしていたら、銭湯にいるような黄色いアヒルが横にちょこんと座った。それから、折り紙で作ったシャツ型の楊枝入れも。
「お客さんが作って持ってきてくれるんだよ」と。
お父さんは話好きで、その後もバラエティ番組で観たユーハイムの素晴らしさについて喋り、お母さんは黙々と作業を続けている。
食べ終わってもなんだか永遠に居ついてしまいそうで、ちょうどいいタイミングを見計らって切り上げた。「また、よろしく!」とお父さんがいい、お母さんもニッコリと送り出してくれた。
毎日通う常連さんも多いのだろう、愛されている空間だということがひしひしと伝わってくる。
おいしい蕎麦と同じくらい大切にしているであろう、温かなサービス。
たった10分くらいの滞在時間。
ちょっとした世間話は、みんなが和やかな気持ちになれる魔法だ。
東京でおすすめの立ち食いそば屋へ。浅草橋〈ひさご〉店舗外観
藍色の暖簾に惹かれて。浅草橋駅の高架下は飲み屋やごはん屋さんが立ち並ぶ一帯。
貼り紙が多い店は緊張するのですが、どれも達筆!そしてよく見ると温かなメッセージがちらほら。
「いつまでもかわいがってください!」と、美しい文字で書かれているギャップよ…!
「ひさご」って「瓢箪(ひょうたん)」という意味なんですね。
東京でおすすめの立ち食いそば屋へ。浅草橋〈ひさご〉メニュー
立ち食いそばファンに人気だという、浅草橋〈ひさご〉。
ひとくち食べれば、その理由がわかるはず。
今回は冷やしそばとちくわに。
真っ黒なつゆに、そばと半円型のちくわが2つ。つゆの色の濃さを見た瞬間、結構塩辛いのかなとドキドキしたけれど、お醤油の風味がありつつ、角が取れた丸みのある味わい。
麺はなんと自家製、細くて喉越しがいい。朝から暑かったので、冷やしそばにしたのですが、キーンと冷たすぎないのも良くて。平松さんの「そばですよ」によれば、築地から仕入れてる氷柱を水に入れて、そこにつゆの入った容器を入れて冷やしているんだとか。
青のり入りのちくわ天も油っぽさがなくて、朝からするっとイケちゃう。
ここのちくわ、モッチモチだな…思い出すとよだれが…!
店内は、4人も並べばいっぱいなL字型のカウンターなのですが、こんなに小さな立ち食いそば屋で、たった400円弱で食べられるのにハイクオリティーなんですよ……。衝撃的でした…。
BGMはラジオ。朝のニュースを聞きながら、あまりの美味しさにしみじみしていたところ、マスターがさっとカウンターに置いてくれました。
シャツ型の楊枝入れは、常連のお客さんが作って持ってきてくれるんだって。愛しかない…!
小さなアヒルちゃんは、お風呂に浮かべて楽しんでます。
この日以来、モーニングそばにハマってしまい、ちょこちょこと空いた時間を狙ってまわっています。暑くなってきたし、冷やしそばの美味しい季節ですね。
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東京でおすすめの立ち食いそば屋へ。浅草橋〈ひさご〉店舗情報
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