2年目のミニバラが咲いた。
それをきっかけに、荒れ放題だった小さな家庭菜園を再開した。
冬に観葉植物を枯らしたのが根強い後悔となり、「もう自分には植物を育てる資格なんてない」と落ち込んだのに、春になるとどうもベランダに植物を置きたくなる。
ホームセンターへ行き、いくつかハーブの苗を買った。スペアミントとローズゼラニウム、フェンネル、ローズマリー。
たった数百円で買える植物の子どもたちをカゴに入れた。
スーパーでハーブを買おうとすると高い。それに小さな店だと取扱っていないこともしばしばなので、万年ハーブに飢えていた。
手を動かす前にマニュアルを読むのが苦手で、寄せ植えのコツも知らずにそれらをいくつか一緒に植えた。
勝手に2年目も元気に花を咲かせたミニバラの隣にフェンネル、その手前にローズゼラニウム、そしてスペアミント。いま紹介した順番は、現在元気に育っている順でもある。
バラの季節と同じくらいにフェンネルがすくすくと育ち、葉っぱを水につけてハーブ水を作った。
これは近所のカフェがやっていたのを真似したのだけれど、フェンネルの甘みが感じられて爽やかな味になる。
たいした世話もせずに育ってくれるハーブの逞しさに背中を押され、今度は野菜に挑戦することになった。
今年は野菜の価格が目に見えて高騰しているし、自分で作った方が安上がりなのでは、という浅はかな考えもあった。
育てやすいと評判高いミニトマト、大葉、甘ししとう、それにナス。
ホームセンターで次々に苗をカゴに入れるわたしに、夫が「その苗を持って帰るのは誰だと思ってるの?」と一言。
「小さいし、自分でも持つから平気だよ」と反論しつつ、きっとこれは「また枯らすくせに」というニュアンスが含まれているんだろうなと推察する。
ここでやめておこう、うまくいくか分からないし、と会計へ向かう。
すると、「すいか、育ててみたいな。それかメロン」と夫。
あんなに苗を増やすなと反対していたのに、ここに来てその発言ですか……と呆れつつも、心が揺さぶられている。
ベランダですいか、育つのかな……。でも、ロマンあるな。たった398円でチャレンジできるなら、一度くらいやってみてもいいかもしれない。
「買おう、すいか。育つかわかんないけど」と、カゴに入れた。苗に刺さった紙製のポップには、赤いスイカにかじりつく子どもの写真がプリントされている。
プランターはプラスチックの質感があまり好きでないため、黒いフェルトでできたものをネットで購入し、いくつか野菜用の土も買った。
プランターと土が届き、さっそく植え替えをしようと土の入った袋を開封してプランターに入れると、思った以上に足りず、用意したプランターたちは心もとない表情でこちらを見ている。
そう、プランターも土も容量のバランスを何も考えずに買ったのだった。ああ。
そうして土を追加注文し、調べている間に、実は土の下に水捌けをよくするための石もあった方がいいことを知る。
もう植えちゃったし、今年はもういいや。っていうか、いくら土を注文しても足りないんですけど。
こうしているうちに、土にもお金が結構かかることに気づく。気づくの遅い。
それでもやっぱり、緑いっぱいのベランダは見ていて気持ちがいい。日に日に育っているものを見る楽しさよ。
100均で見つけた葉ネギとパセリは種から育て、毎日すくすくと小さな芽を伸ばす姿を愛でている。
ミニトマトはぐんぐんと背が高くなり、支柱が必要になった。
夫にお願いし買ってきてもらったところ、まさかの突っ張り棒を差し出されて一悶着あったけれど、黒いプランターに黒い突っ張り棒の組み合わせは思った以上にスタイリッシュで笑った。
いまはもう、5歳の甥っ子の背丈よりも高く、鈴なりに赤いトマトを実らせている。
スイカはどうだろうか。
植え替えたプランターはあまり大きくないので、サイズは期待していないけれど、ぽっちりと顔を出してくれさえすれば、それだけで「ありがとう」と手を合わせてしまうかもしれない。
参考:Amazonで買ったもの
①不織布の鉢(サイズ不明・多分このシリーズ)
②果物、野菜用の土
ホームセンターへ行った日のエッセイ