シモダさん、こんにちは!
この度は企画にノリノリで乗ってくださってありがとうございます。
わたしから誘ったのに、シモダさんから原稿書いてくれるところからして、もうZINEのこと語りたくて仕方ない感じが見えて最高です!(ジャンケンで決めたような気もしますが、あの日の打ち合わせは暑くてずっとぼんやりしてた記憶ばかりです、すみません)
打ち合わせの日からタイトルを考えていたのですが、これは「全日本コントファンクラブ」という好きな企画ライブからオマージュしました。(怒られないかな……)
なんにせよ、個人の創作物であるZINE(複数人で作ってるものもありますが)には作り手の伝えたい気持ちが1200%と濃縮された作品であり、それゆえに好きな人は好きでたくさん読むけど、読まない人は全然手に取る機会も知る機会もないだろうな、という点がもったいない!と常々思っていて。
あと、単純に好きな作品についてもっとラフに語れたらいいよね、というのをずっと思ってるんですよね。その語りたいテンションが同じ(またはそれ以上)であるシモダさんに出会えたのもとても嬉しく、今回の企画にお誘いしました!
初回の圧倒的な熱量の高さとチョイスに痺れました……!
【全日本ZINEファンクラブ】1通目 / ブックバーひつじが
「場づくり」のお手本にしてるZINE、読みたすぎる。以前、福岡のひつじがさんで販売してるZINEについて、選ぶ過程や販売の仕方などをいろいろお聞きしましたが、わたしは静かに胸が熱くなりましたよ。ああ、東京支店作ってもらえませんか。
話は戻り、『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』も以前読んで衝撃を受けたので、『日本海食堂大百科』も手に入れねば。わたしもお世話になっている大阪のシカクさんのも読まなきゃ。(後日買いました)
最近本屋の店主さんが書くエッセイや日記がよく出版されている気がするのですが、それに対して「もう本屋本はいいよ」って声をどこかで聞いたことがあったんですね。
だけど、本屋という括りは一緒でも、その店その人ごとで語れる話は絶対違うわけで、個人的にはもう全員書いてくださいと密かに思ってるほど好物です。
と、だいぶ前置きが長くなりました。
今回わたしが紹介するZINEはイラストもの!
ふだんテキストメインのZINEを買うことが多いのですが、「これは!」というものに出会えて嬉しくなったのでここで語らせてください。
『中華満腹見聞録』寺田燿児
まずはこれ!
偶然Instagramで見つけて購入した作品なのですが、表紙から名作の雰囲気なのです……!
作者の寺田燿児さんはミュージシャン・漫画家だそうで、折坂悠太さんのライブにも参加されているとのこと。
時代の流れと共に閉業の波が押し寄せる町中華の数々をイラストとテキストで紹介しています。紙面デザインも美しく構成されているところも好きです。
著者曰く「閉店と聞くやいなや駆け付けてきた自分への懺悔の記録」とあり、ここまではっきりと言い切りつつ、愛を詰め込んだ作品に昇華しているのは素敵だなと。
変わりゆく街への喪失感と失われてほしくない景色への願いが根底に感じられ、共感を覚えました。わたし自身の活動と近いからかもしれませんね。
イラストで食べものが描かれたページは少なく、外観や看板に描かれたオリジナルキャラクター、そして時には床!と切り取る視点も構成もいいんですよね。
このZINEからひとつ紹介するとしたら、国立競技場にあった「水明亭」という店のこと。
東京の街はどこもかしこもと言っていいくらい再開発ばかりしていますが、ここには既にホテルが建っているとのこと。
東京五輪と関係があるのか明確には分かりませんが、大きくて新しいものばかりに街が飲み込まれていくような開発はいかがなものか、ということはずっと考えています。
『小学二年生』母アパレル
まるで小学生が描いた絵日記を覗き見しているような作品。イラストレーターの武者小路晶子さんが「母アパレル」という名義で作っています。
吉祥寺「百年」で見つけて思わず声が出そうになりました。良すぎる……!
ZINE界隈では有名なレトロ印刷を巧みに使った二色刷りにも痺れますが、やっぱり人の暮らしっておもしろいなぁと。
コロナ禍で気がかりだったことのひとつのは、子どもたちが楽しく生活できているんだろうか、ということでした。
この作品で綴られるのは、母アパレルさんの息子「マー坊」の日々。一ページ一枚のイラストとテキストで暮らしが綴られます。
「保育園でのあだ名は90歳」というマー坊。趣味が激シブで、お城や戦国武将が大好き。落語もたしなむという男の子で、只者ではありません。いや、只者の人なんていないんですけど。
ページをめくっていると、いろいろと制限はありつつも、マー坊は毎日楽しく過ごせていたことが伝わってきてホッとするんです。
もちろん日々のひとつの出来事を切り取って編集しているから結果的にそう見える、という面はあるかもしれません。
ZINEに挟み込まれていたプリントには、作者である母アパレルさんは心身ともに疲れ果てていた時期があったと綴られているのですが、そこへ思いを寄せることを忘れるくらい、マー坊を見ていると愉快な孫を見ている気分になります。
家族を作品の中に登場させることについては、最近ことにあちこちで言及されていますが、こういうピースフルな作品はいつまでもあってほしいな、と願っています。
ちなみにこちら、『小学一年生』も販売されています。また買いに行かなきゃ。
『SCRAP BOOK』fuchi
最後は紹介するも何もというか、感想を言いたい!ので取り上げます。
ひつじがで買わせていただいたイラストレーター、ふちさんの作品集よすぎました……!
この連載ではお互いが知らなそうな作品を見せ合うのがいいのかなと思ったんですが、「あの作品いいよね!」って伝え合うのも楽しいよねと思って。ふつうの生活の中でなかなか伝え合う機会ってないですし。
ふちさんの作品集、全ページお洒落で可愛い子だらけでときめきました!
矢沢あい『ご近所物語』とかソフィア・コッポラとか60年代のフランス映画とか、ガーリーカルチャーを思い出しました。
でももちろん、そういうカワイイアイコンをなぞっているのではなく、懐かしさをいい塩梅に含みながら今っぽく洗練されているのが好きだなと。
5人の女の子のアップが並んでるページ、ああいうデザイン、90年代の8cmシングルCDのジャケットを思い出しました。(その時代、シモダさん生まれてるかな)
色々言ってるようでなにも言ってないような表現でごめんなさい。
作品には時代性が反映されるものだと思いますが、この作品はきっと色褪せないだろうな。伝説の一冊になるんじゃないでしょうか。
わたしは20代の頃洋服屋さんで働いてたこともあって、ふつうの日でもバリバリにお洒落するのが大好きだったんです。真冬の冷たい風が吹き荒ぶ中、ショートパンツにヒールみたいな日もあって。
今はゆるやかに好みも変わり、いまはもうユルさが最重要事項となっているわたしは、これを見てお洒落をしたくなりました。
あ、書いていて気付きました。
ここに描かれている女の子たちが好きな理由が。
誰かのためじゃなくて、自分が好きだから着ている感じが伝わってくるんですよね。
「『アラフォー(この言葉ずっと苦手です)でも大丈夫なTシャツコーデ』とか『高見えするユニクロコーデ』が提唱する世界の真逆をどんどん進んでいきましょうよ、この作品とともに!」という気持ちでいっぱいになり、ZOZOTOWNで派手なサテンのボトムを買いました。
おわりに
「イラスト描けるっていいな」ってずっと思っています。
写真は多くの情報を伝えてくれるけれど、イラストの余白が好きで。実物を見せないことによってこちら側の楽しみを残してくれているというか。
わたしが好きな店のことを書く時に大切にしていることは、全部を書きすぎないことなんです。いつも、読んだ人が実際に行った時に楽しめる余白を用意しておきたいなって思っています。それが正解かはさておき。
今回紹介した作品たちは、もしかしたらそういった点において惹かれているのかもしれません。
ああ!さらっと書くつもりが、だいぶ長くなってしまいました。
「連載やりましょう」と声をかけたのはわたしですが、この連載キケンですね。読みたい作品が無限に増えてこまる。
嬉しい悲鳴とともに、次回のおすすめを楽しみにしています。
次回の更新は「ブックバーひつじが」シモダさんです。(8/25公開予定)