首のコリがひどくて、「あー、どうにかならないもんか」と歩きながら上を見上げると、
ビルの2階からおじいちゃんと孫がこっちに向かって手を振っていた。
ほんの偶然だけど、会釈を交わしたことでちょっと元気になった。
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益田ミリさんのエッセイマンガは、そんな日常にひそむ「取るに足らない」出来事ばかりだ。
でもその「取るに足らない」出来事に、わたしたちはいつも感情を動かされている。
いそがしくてそんなことを覚えていられない人がほとんどで、人と共有することでもないのかもしれない。
今の世の中、悲しいニュースやこころを揺さぶられる話ばかりで、その「取るに足らない」出来事は重要度が低いと見なされて、端へ追いやられがちだ。
でもどうだろう?
この本が人気なこと。
どうでもいいようで、こころがほっとするような、日常で起きた出来事がツイッターなどSNSで拡散されること。
ほんとはみんな「取るに足らない」ことをもっと共有したいのではないか。
道端ですれちがった赤ちゃんが笑ってくれた、とか、そんなことで救われる日もある。
だれかの心ない態度にいらっとしたけれど、後々考えてみたら可笑しくなってきたり、
振り返ってみると自分も悪かったな、と気づいてみたり。
そんな、わたしのささやかな日常と、ミリさんの描く作品の日常が交差する。
うん、この本がそばにいてくれたら、なんとかやってける気がする。
どんよりしたこころをちょっとだけ軽くしてくれる。
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見えないもの。忘れ去られていること。
そんな日々のカケラをミリさんは描く。
人生ってこんなにも優しい。
泣けてきた。
石田ゆり子
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