ガラリと扉を開けると、なんだかおばあちゃんちに帰ってきた気がした。
たまに地方へ行った時に見かける、民家をそのままカフェにした「実家カフェ」のような雰囲気。
よく晴れた日の西日に照らされ、年季の入った白い暖簾は、墨で書かれた「モカ」の字が薄くなっている。
シンプルな暖簾が妙にスタイリッシュで、一見すると若者が古民家を使ってリノベーションしたカフェっぽくもあるけれど、れっきとした喫茶店。
「どれくらいやってらっしゃるんですか?」と聞くと、「もう半世紀くらい」と優しい笑顔を浮かべるマスター。
背の高いマスターの黄色いエプロンには、胸元に「いらっしゃいませ」の文字が光っている。
「ここ以外で働いたことがないから」と穏やかに話すマスターは、お客さんと話をするのが大好きなようで、気づけば1時間くらいのんびりと話を聞いていた。
昔はフィルムカメラが好きで、よく撮りに行っていたこと。夜景も撮ってたけど、いい写真が撮れたと思えるのはたった1枚だけという話。日帰りでスキーへ行って、寝ずに店へ立っていたこと。
常連さんが撮った写真を「切り取り方のセンスがいいんですよ。僕にはこう撮れない」と、100枚近くある写真をごっそりと見せてくれた。
「『コーヒーにミルクを落とした瞬間が絵みたいでおもしろい』って言って、何枚も撮ってたんですよ」と、焦げ茶色のキャンバスに落とされた白い線は、まるで和室に飾られた掛け軸のようだった。
「知り合いが来たときは、夜中の1:30まで開けてましたよ」と話すマスター。下町の喫茶店は夕方ごろに閉まる店が多い中、こんなところに夜の癒しスポットがあったとは。
起きている時間のほとんどは、店で過ごす時間。それが当たり前になっているから、お客さんが来なくても早く閉めようとは思わない。空いた時間で、なにをしたらいいかわからなくなるから。
オンとオフの境界があいまいで、だからこそ心穏やかに、自分の軸で暮らしている平常心みたいなものが、今だからこそ眩しく見えた。
東京のレトロ喫茶店めぐりー北千住〈モカ〉でクリームソーダを 店舗外観
千住にある〈珈琲モカ〉は、荒川と隅田川にはさまれた地域にあります。尾竹橋と西新井橋の近くで、ちょっと変わった地形にポツンと佇んでいます。
北千住駅からだと徒歩20分ほど。駅から離れているからこそ静かに過ごせる場所です。今回は、浅草からバスで行くルートでお邪魔しました。
「ミルクホール」とは、牛乳や珈琲、パンなどを提供する軽食やさんのことだそう。看板もいい味出してます。
暖簾のかかった喫茶店ってめずらしい!洋と和の融合が素敵で、ちょっと今っぽさを感じました。
東京のレトロ喫茶店めぐりー北千住〈モカ〉でクリームソーダを 店内
ピンク色のテーブルにソファの席。奥にはゲーム機のテーブルもありました。
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なんとなくお蕎麦やさんっぽい雰囲気ありませんか?
東京のレトロ喫茶店めぐりー北千住〈モカ〉でクリームソーダを メニュー
この日は暑かったのでクリームソーダを。お喋りしながら撮ってたら、アイスが溶けてシュワシュワこぼれそうな泡になっていました。
ピンクのテーブルにグリーンのコースターが映える。
パインジュースがあるのがいい。もちろんコーヒーや軽食もあったので、次はランチや夜にもお邪魔したいな。
この辺りは路地にネコがたくさんいるので幸せ。
東京のレトロ喫茶店めぐりー北千住〈モカ〉でクリームソーダを 店舗情報
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