夜明けの隅田川が美しい。
蒸し暑くて全く眠れず、朝焼けの美しさに家を飛び出た。
夜明け前の隅田川は風もなく、水鏡になって街を映し出す。
4時台の街はほとんど誰にも会わず、街を独り占めしているようで気持ちがいい。
空を見上げると、優雅に羽を広げて飛び交うコサギがいた。
水鏡になった隅田川に波紋が広がると、黒い鴨のような鳥が顔を出し、また潜る。
「こんな時間に人間はいないだろう」と思ったのか、テラスすれすれの水辺には堂々とのんびり泳ぐ魚もあちこちに現れ、こちらに気づいてササッと逃げる。
今日はあいにく釣り人もいない。
ピンクに染まり、やがて薄水色の空が広がる頃、スカイツリーのそばで朝日が昇る。
日がさす前から湿度は高く、ここが沖縄なら許せるのにと唇をかむ。
ふと、くるりの『迷路ゲーム』という曲が頭の中で流れた。2001年にリリースされたアルバム『TEAM ROCK』は、何度聞いたかわからない愛おしい作品だ。
テラスの手すりにもたれかかり、Spotifyから曲を流し、ただ水鏡を眺める。
なんだかリフレッシュできない、とぼやいていたけれど、隅田川では毎日のように美しい眺めが繰り広げられていたんだった。
わたしにとって、隅田川は一番身近に自然を感じられる場所。橋だってテラスだって人工物だけれども、川辺に暮らす鳥たちや魚たちは、誰にも制御されずに生きている。
そんな姿を見ると、なんだか「もっと自由にやれよ」と励まされているような気持ちになるのである。
6月のエッセイ