なにかを作ろうと思うと、すぐスマホに手が伸びる。
そりゃ、不器用なわたしが最短距離で何かを完成させるとしたら、それが一番いい方法なのは明白だ。
時短と完成度を求めるならば。
でも、ときどき無性に思うがままに手を動かしたくなることがある。ボタン付けすら誤魔化してなんとかできるくらいの不器用さなのに。
頭を働かせて作業しなくてはいけないことや必要急務のことに注力しなきゃと思いつつ、なかなか集中できない。
部屋の片隅に目をやると、1週間前に買ったドライ用の植物がちらり。
……スワッグ、作ってみたかったんだ。
花屋や雑貨屋で売られている完成品を買ったほうが、確実に美しいものが手に入る。
でも、すごくシンプルなものだったら自分でもできるかもしれない。植物たちをまとめたら、不格好でもなんとなくいい感じになるに違いないという浅はかな期待があるから。
ついつい「スワッグ 初心者 作り方」とググりそうになってやめた。自分の頭で考えようとしないと、なにも考えられなくなるというのはここ数年実感したことだ。
自分の手を動かして失敗しなくては、どこがポイントなのかもきっと分からない。
花屋でリースに使われていた赤い実とモミの木っぽいグリーンを買い、たった2種類でシンプルなスワッグに挑戦した。
束ねるだけなら簡単でしょ。
そう思った自分に想像力が欠けていたと気づくのは、グリーンを適当に切り分けたタイミングだった。
束ねただけじゃまとまらない。
大切な日に限って爆発した寝癖のように、葉っぱの先端があっちこっちへ向いている。
シュッとしたいんだよなぁ。
と、なんとなく要らないところを切って、尖った枝や葉のチクチクとした触感を感じながらざっくりまとめた。プレゼントのラッピング用に買ってしまっておいた麻紐を道具箱から取り出して、一本一本の枝をぎゅっと結わいた。
ものの30分で完成。
多少バランスは悪いけど、どこに気をつけて作ればいいかがなんとなく分かった気がする。
貧乏性だからか、枝振りの良いものは切り落としたくないと思ってしまうけれど、ボリュームが出すぎると不格好だから、バランスを見て整えたほうがいいこと。
枝が丸裸で見えていると見栄えが良くないので、できればグリーンを絡ませて隠したほうが良さそうなこと。
今まで見てきたスワッグを思い浮かべて完成形をイメージしながら作ることが一番大事なような気がする。
なにより、植物に触れている時間が心地よくて頭がスッキリしたのが、実は一番嬉しかった。
失敗したくないから、クオリティを上げたいから、と最初から調べなくてよかった。きっとどの方法がベストかを悩み始めて嫌になっていたはずだし、納得のいかない仕上がりで自分を責め立ててしまいそうだったから。
この数ヶ月、失敗という概念を変えたくて、自問自答を繰り返したのをふと思い出した。それで言うと、買ってきた枝をまとめただけで成功とみなしても良いかもしれない。
目標に近づきたくて、でも失敗が怖くて踏み出せない。目標が大きくなれば大きくなるほど、その壁が高く、身動きができなくなる。わたしは小心者で失敗ばかりを重ねてきたから、ひとつの物事がうまくいかないと簡単に挫けそうになる。
でも最近は、そのひとつひとつの「うまくいかなかった出来事」も、目標までのひとつの体験にすぎないのかもしれない、とほんの少しだけ思えるようになった。そもそも、成功ってなにを指すんだろうか。自分にとっての成功の概念もあやふやだ。
想像以上に野趣あふれるスワッグが完成した。
壁に吊るしても良いし、スツールに置いても存在感が出て可愛いかもしれない。そんな風に思案する時間すら愛おしく感じられたのは、まず調べずにチャレンジしたからなのかも。
よくよく見たら、スワッグに使ったグリーンはモミの木でもなんでもなくて、おそらくソフトヒムロスギっていう植物だったけれど。(違っていたらすみません)
スワッグ初心者が作ってみた工程
①まず、花屋でグリーンと赤い実のついた物を買ってきます。(植物の名前聞くの忘れました)
②花用のハサミで、枝の長さを調整します。
好みの長さでOK!最後に枝をまとめるので、邪魔になりそうなところの葉っぱは落とします。片手で掴めるくらいの長さ分を枝のみの状態にするとまとめやすいです。
③同じように赤い実の枝も切り分けて。
④ざっくりと束ねたら、作りたいスワッグをイメージして、葉を落とします。
今回選んだ葉っぱがトゲトゲしていたので、先ほど落とした葉を束にした葉のあちこちに絡ませるように入れ込むと、ボリュームが足りないところもいい感じに。
⑤赤い実の枝を好みのバランスの位置に調整します。
⑥まとまったら麻紐で結びます。
⑦これで完成!
後ろから見るとこんな感じ!
メインになる太めの枝を中心に束ねれば、とりあえず収まりのいいフォルムにはなります。
プロと比べたらいろいろとアレだけど、結構気に入りました。ユーカリ入れても素敵!
部屋の壁に吊るしても、スツールに置いてもなかなか可愛いかも。
〈かもめと街〉チヒロが書く、暮らしのエッセイ