角にある喫茶店が好きだ。
街と一体化しているように感じるし、なにより自然光で店が明るく見えて開放的な気分になれる。
たとえば、タマゴサンドが名物である谷中のカヤバ珈琲、ホットケーキがおいしい小田原のケルンもそうだ。
外から丸見えなのは、ちょっと落ち着かないとも思いつつも窓際の席はどの店でも特等席で、人気な気がする。写真を撮るにも都合がいい。
でも、そんな窓際に座れなくとも、店を俯瞰で見られるような席も好きだ。
入谷の「とみー」の入口近くの席に座ると、見えてくるのはカウンターでせっせとランチを作るマスター、そして少し遠くに見える窓際の席。ちょうちんのように吊るされたペンダントランプはテントのような三角だ。
壁に飾られているのは、歌川国芳の猫をモチーフにした洒落っ気のある手ぬぐい。お店自体は古いけれど、どこか品が感じられるのは、そういう装飾品からなのかも。
和風のロングスカートのようなエプロンを翻し、マダムがカフェオレを持ってきてくれた。
それと同時に、どこからともなく小鳥のさえずりが聞こえてきて、その清涼感ある高いトーンの歌声が心をくすぐった。
帰り際に「小鳥飼ってるんですか?」と聞くと、「そうなんですよ。『いらっしゃいませ』とか挨拶も、わたしたちの真似をしていつの間にか覚えたみたいで、話せるんですよ。」と。
午前中は鳥かごから出してるから、また遊びにいらして、と。
小鳥のさえずりがBGMになる喫茶店、ありそうでなかなかないけれど、想像だけで充分癒されそうな予感がしている。
入谷のレトロ喫茶店〈とみー〉店舗外観
入谷から浅草へ向かう途中に見つけた、大通りに面した喫茶店。〈とみー〉のロゴが、刺繍のハンドステッチのようでかわいい。書き順を頭の中で想像してなぞってしまいます。
入谷のレトロ喫茶店〈とみー〉店内
銅板をくるりとまるめたようなランプ、よく見るとパンチングのような穴が空いていて、そこから光がもれています。窓枠の上部もアーチを描いていて、どこかノスタルジック。
藤で編まれたような背もたれ、なんだか好きなんですよね。
そうそう、これ!
歌川国芳の「其のまま地口猫飼好五十三疋」という浮世絵をプリントした手ぬぐいなのですが、これがかわいくてもう…!
地口というのはダジャレのことを指すそうで、タイトルは「東海道五十三次」のもじりだし、地名と猫のひとことが微妙にリンクしているのが見ていて飽きません。
そだつか→ひらつか、なまず→ぬまづ、おきた→よしだ……、となんだか無理やりなところも多いのに笑っちゃう。今だと親父ギャクと揶揄されかねないけど、そもそもどこか共通点を見出せる人ってすごいと思うんですよね。全然思いつかない!
入谷のレトロ喫茶店〈とみー〉メニュー
ランチのスパゲティセットが気になりつつ、今日は近くの〈リトルアジア〉へ行きたいから、カフェオレで。
ひまわりのようなオレンジのティーカップが70年代っぽい。
立体バージョンの店ロゴもいいですね。
浅草の合羽橋や国際通りからもさほど遠くなく、歩ける距離なので、ぜひ近くに来た際はどうぞ。
入谷のレトロ喫茶店〈とみー〉店舗情報
下町エリア外の喫茶店シリーズ〈純喫茶で東京をめぐる旅〉