ガラスの鉢に入っためだかを見つけた。
秋葉原からほんの少し歩き、岩本町の駅近くにはオフィスが立ち並んでいる。よく見ると渋いビルも多くて、立ち食いそば屋さんの看板もいい感じ。
繁華街からちょっと離れたところにある、常連に愛されている喫茶店が好きだ。入るのには勇気がいるけれど、いちど入ってしまえば居心地がいい。洒落たカフェよりも喫茶店の方が落ち着く気がするのは、年を重ねたせいなのか。
実家にありそうなガラス戸の食器棚にはティーカップセットがしまわれていて、ネイビーのエプロンを着けた細身のマスターは静かに佇んでいる。
お会計をしようと席を立つと、レジの隣にガラスの鉢が見えた。きれいに手入れされた鉢に鮮やかなグリーンの水草が眩しい。めだかをじっくり見たの、いつぶりだろう。
「めだか、意外と大きいんですね」というと、マスターは「飼い始めて2,3年かな」と答えた。
「けっこう長生きするんですね。」と言うと、「でも2,3年くらいみたいです、めだかの寿命。」とこちらと目を合わせて言った。
「そうなんですね。じゃあ、めだかが元気なうちにまた来ますね」なんて軽々しく言うのは憚られる気もして、一瞬反応にこまった。
「2,3年も一緒に過ごしたら、充分情が湧くよな…」と瞬時に考えて「あら、そうなんですか…!」みたいな中途半端なリアクションをしてしまった。ただの世間話というだけだったのかもしれないし。
でも、そんな意味のあるような無いような会話に、日々生かされている。誰かとちょっとした会話をする時間こそが、今は愛おしい。
純喫茶で東京をめぐる旅 vol.13 秋葉原〈コーヒーショップ 司〉店舗外観
秋葉原の駅から徒歩数分。神田川クルーズを横目に見ながら、岩本町の駅方面へ。
近くにはストライプのモチーフが暖簾のようでかわいい看板が。ここの立ち食い蕎麦屋も気になる。
岩本町駅から浅草橋方面に入る道、渋めのビルがあちこちにあるので目線が忙しい。
秋葉原駅周辺はどこも人が多くて落ち着かないので、ゆっくり休憩したいなら歩いて岩本町に向かうのもいいかも。
〈コーヒーショップ 司〉は、入口のワインレッドなテントが年季を感じさせる佇まい。
全面ガラス張りだけど、生け垣で視線を遮っているところが落ち着きますね。
純喫茶で東京をめぐる旅 vol.13 秋葉原〈コーヒーショップ 司〉店内
角丸のテーブルに、ラウンド型のチェア。この椅子、思ったよりふかふかで、腰を下ろした瞬間に幸せを感じます。
近所の会社で働くおじさんたちが会議していました。
そういえば前に、「昔の会社には会議室なんてなかったから、喫茶店を会議室代わりにしてたんだよ」って話を浅草橋のモンシェルで聞いたんだった。
味気ない会議室よりも喫茶店で会議、いいな。全部聞こえちゃうけどね。
鮮やかなグリーンのブラインド、ちょっとめずらしくないですか。
キャラメル色のグラスに灰皿。ここはいまも喫煙OKのもよう。
純喫茶で東京をめぐる旅 vol.13 秋葉原〈コーヒーショップ 司〉メニュー
暑い日だったので、オレンジスカッシュを。
ミキサーでがーっと作ってくれる音に期待が高まります。まさかの生ジュース仕立てとは!すっきりとした甘さにしゅわしゅわソーダ。甘すぎなくてもっと飲みたくなる味。
オーダー表のノスタルジックさにも痺れました。
トナリマス…!
裏通りにひっそりとあるためか、人も多すぎすのんびりできる空間。秋葉原の喧騒に疲れたら、ぜひこちらへどうぞ。
純喫茶で東京をめぐる旅 vol.13 秋葉原〈コーヒーショップ 司〉店舗情報
純喫茶で東京をめぐる旅 vol.12 六本木〈る・ぽーる〉