あの店へ行けば、あの人に会えるというのは幸せなことで。
約束してなくても、こちらが出向きさえすれば好きな店主がいる。
その人たちの働く場にはパワーがあって、たとえ別の場所で同じモノを売っていたとしても、見え方が全然違う。
それは、その人がきちんと自分で選んで置いているから。「なんとなく」は、ひとつもなくて、なにかしら意味がある。
わたしは何をするにも、何かを信頼するにも、その情報の発信元である「誰が」という点を、人よりも比重重ためにセットしている。(妄信的に信じる、という意味では決してない)
だから、YATOにある本は信頼しているし、ほんとにもう、全部買い占めて読みたい。そんな風に思えた本屋は初めてだ。
「この人の薦める本なら、ふだん読まないジャンルだけど買ってみようかな」と思える本屋である。
もちろん、好きな本屋は他にもあるし、大きな本屋の便利さは独立系の本屋には太刀打ちできないかもしれない。
けれども、大きな本屋へ行って「これはYATOにあったから、YATOで買おう」と思うこともしばしば。
置いてある本のジャンルを説明すると、とりあえず、カルチャー(という表現もわかりにくいですね)、ごはん、さんぽ好きにはたまらないはず。
YATOのおかげで、街の歴史とか文化人類学とか、今まで手を出せなかった世界へ興味が広がっていて、それがすごく楽しい。大学生の頃、サークルで先輩たちが「この曲いいよ」って薦めてくれる感覚をまた、味わえている。
たぶん、「売れるから入れる」というのがなくて、「良い本だから置く」ということだけを徹底しているから、なのだろうか。
人を煽って不安にさせて買わせるような本が一切ない。ビジネス書や自己啓発系の本も好きだけど、煽りパワーにやられることもしばしば。そういう、美しくない本がないというだけで、いつでも安心して行ける。
わかりやすさが重宝される時代だけど、きちんとわかりにくさを愛しつつ、その「わかりにくさ」を考える手助けをしてくれる本が並んでいるのがYATOの好きなところでもある。
オープンした当初はすかすかだった本棚も、今ではぎっしりといろんな本が並ぶ。しょっちゅう並び替えられているわけではないのに、その日の気分によって、いつも発見がある。
入口は奥まっているし、深夜のクラブかって思うくらい照明は薄暗いけれど(いつも夜に行くからというのもあります)、それが落ち着く。
両国あたりには本屋がないし、(隣接する蔵前・浅草橋もそう)ましてカルチャーの強い店もまだまだ少ないから、このエリアにYATOができた意味はとても大きいと思う。少なくともわたしにとっては。
下町にYATOがあってよかった。今も充分楽しいけれど、これからのYATOも、とても楽しみ。
◾️「かもめと街」のZINEも置いていただいてます!お散歩の際はよかったらぜひ!
下町の本屋さんぽ〈両国・YATO〉店舗情報
カフェスペースもあり。店主・佐々木さんの選んだスペシャリティコーヒーを中心に、ドリンクも楽しめます。
営業日はYATOのTwitterで確認してくださいね。
関連記事:近くでごはんを食べるなら。老舗の街中華へ。
〈YATO〉の近くでごはんを食べるなら、隣の洋食屋〈クインベル〉も、そばの〈幅田屋〉もおすすめだけど、そのまま蔵前橋通り沿いを錦糸町方面へしばらく歩けば、絶品街中華の〈菜来軒〉も。〈菜来軒〉のビッグなレバニラ炒め食べてほしい~!
おばあちゃんと孫がつなぐ味。下町の街中華〈菜来軒〉で大きなニラレバを。