ブックバーひつじが シモダさま
新年あけましておめでとうございます。
元旦から思いがけないニュースが続き、数日間なにもできない日々を過ごしました。
ふつうの暮らしはかけがえのないものですね。そんなこと、いつも通りに過ごしていたらあっという間に忘れ去ってしまうし、毎日全力では生きれないけれど(疲れちゃいますしね)、大事にしたいなとは思っています。この連載も細々と続けていけたらいいですね。
前回のお手紙のお返事から、いつも通り始めたいと思います。
文学フリマで狙い撃ちして買ってもらう方法ですか……。知ってる人に教えてもらいたいテーマですね。いろんな作品を見て言えるのは、テーマをわかりやすく尖らせることくらいかなって思います。尖らせてない自分が言うのは説得力に欠けますが。コツコツ作品を作り続けることと、SNSで何度もお知らせするという、地道な活動がいちばんの秘訣なのかなあ。誰かに聞いてみたいですね。
『国立キャラクター大図鑑』、いいですね〜。まちにいる謎のキャラクターを集めたというコンセプトがいい!見ているようで見ていなかったけど、「これおかしくない?」ってオブジェって、思った以上に街に点在してますよね。こういうZINEの危険なところは、街に気になるモノが増えすぎること……!
『めいが通信集』はたしかひつじがさんにお邪魔したときに見せてもらったような。欲しい欲しいって言ってたら売ってくれないかなって思ってました笑
イラストの雰囲気とリソグラフ印刷が合っていて素敵ですよね。「ヒツジガ通信」の元ネタというのも納得。こうやって誰かが作ったZINEが他の誰かの制作物のヒントにつながっていて……みたいなの、すごくいいですよね。わたしも以前、日記ZINEの巻末に見たライブなどの一覧を載せていたら、そのアイデアを使ってくださった方がいて嬉しくなりました。そういうZINEの製作者同志の輪っかみたいなのを感じる瞬間って幸せなんですよね。
そんなわけで、新年初のおすすめZINEの紹介を始めたいと思います。
『ママになるつもりはなかったんだ日記』べっくや ちひろ
2年ほど前にインタビューしていただいたことがきっかけで知り合った編集者&ライターのべっくやちひろさん。(同じ名前!)
以前からべっくやさんの書くエッセイが好きで。「いつかZINE出したい」とお話を聞いていたので、出すと聞いたときは「ついにキタ!」と心の中でガッツポーズしました。
このZINEでは、子どもを持ったことによる、社会からの目線の変化と、それに戸惑う心情を丁寧に書いていて。「ママ」という属性に急に押し込まれる生きにくさというか。
社会からのラベリングって、自分もしてないとは到底言い切れないのですが、学生の頃から「こういう人」って決めつけられたり行動を制限されるのがとても嫌で、その度にさりげなく吠えてたんですよね。たとえ貼られたラベルが違えど、その気持ちを共有できるエッセイってすごく有意義な作品だなぁと。
特に30-40代くらいになると、属性の違いによる分断ってすごく感じるんです。「結婚している/ いない、子どもがいる/いない」という点で分けられがちというか。それが大きな要因で疎遠になったりする反面、全然関係なく付き合える人もいて。
それぞれの立場を想像できたらいいよなぁと常々思っていて、そのためにもいろんな方に読んでほしいなと思いました。
あちこちに編集者の経験をいかした技が光っていたのも非常に勉強になりました。書きたいことから導いたタイトルやデザインもわかりやすくて。表紙の「ママ」の文字のパンチの強さは目をひくし、なんとなく「ママ」という言葉に抵抗感があるのが伝わってくるというか。
べっくやさんのエッセイを読んで、「ママ」という言葉に違和感を持ちながら子育てしている方もいるんだ、と知れたことも発見でしたし、なにより視点に冷静さがあるから「ママ」じゃないわたしのような人にも刺さるんですよね。ものごとや自身との距離を測りながら書いている点も非常に好みです。扇情的でないというか。(ここ大事)
『しばり日記』ひととなり書店
以前、展示に来てくれた大学生の男の子が作った日記ZINE。昨年11月の文学フリマ東京で、なんと3冊同時発売という快挙。突き抜けた制作意欲から底知れぬパワーを感じて震えました……!
文フリの日は1冊だけ買ったものの、読んでそのおもしろさにハマり、後日タコシェに2冊買いに走りました。家族もすごい勢いで読んでました。まだわたしが読み終わってないのに。
『しばり日記』は、企画者のふたりが友人知人に対して1ヶ月間の日記の執筆を依頼し、それをテーマごとにまとめた日記アンソロジーです。
日記をつけることの負担を減らすために、執筆者に6つのテーマを選んでもらい、それに付随する内容で書いてもらっているのですが、その仕組み化づくりからしておもしろいなって。
デザインも凝っていて、執筆者それぞれで本文デザインを変えているので、ページにリズムが生まれて読みやすいんですよね。
おそらく執筆者はだいたい20代前半の人たちかなと思うのですが、世代こそ違えど、感じることに共通点があること自体(まあ当たり前と言えばそうなんですけど)に嬉しさと安心感を覚えました。
どの方も書き方に個性があって、それぞれの生活も視点も違う。その日記の面白さをこんな形で表現できるなんて。あと、よもやまさんという方の日記、タイトルも内容も面白すぎて、これは何度も読み返したいやつです。多分、シモダさんも好きなはず。
それぞれの執筆者によるあとがきも収録されていて、そこには「企画者の二人が日記についてコメントを残してくれたから続けられた」とあって。その細やかな配慮あってこそ生まれた作品なんだなと、ジーンとしてしまいました。きっと書いた人たちの思い出にも残る作品になったんじゃないかな。ほんとに素敵な企画!
『観光記』池田彩乃
2年ほど前に大阪のスタンダードブックストアで買った、詩人でありデザイナーの池田彩乃さんによるエッセイ集。
こちらもデザインに惹かれて手に取ったのですが、1ページごとに展開されるショートエッセイが心地よく、一気にファンになりました。サクッと読める短さだけれど、書かれていることが沁みるので、通勤通学のおともにおすすめしたい作品です。
ご自身でデザインも手掛けられているからなのか、紡ぐ言葉と装丁・本文のデザインがすごく合っているんですよね。ふだん本を手に取らない人でもお守りにしたくなるようなZINEだなと思います。
2024年の抱負つづき
シモダさんの抱負を読み、今年はどんなことをするんだろう? とワクワクしました!近隣のお店とのZINE作り、楽しそうですね。全国のイベント出店も、なによりひつじがでのZINEイベントの開催!それは絶対に楽しそうです。ひつじがに集まる作家さんはジャンルも多種多様なので、そういった意味でもおもしろそうです!
わたしは、「去年のうちに2024年のやりたいことをきちんとスケジューリングするんだ」と決めていたのに、気づけばすでに1月10日。2月も3月も5月もやりたいことあるのに、現在は来週から始まる個展のことで頭がいっぱいです。
今回は蔵前にある古書フローベルグという、海外の絵本をメインに取り扱っている本屋さんで行うのですが、これも日記ZINEを作り続け、手に取ってくださった方々がいたから。ZINEにハマらなかったらこんな機会はなかっただろうなと思います。
今年もそれぞれの場所を大切に守りつつ、どっぷりとZINEにハマっていきましょ!次回のお手紙も楽しみにしております。
かもめと街 チヒロ
次回の更新は「ブックバーひつじが」シモダさんです。(1/25公開予定)