[連載]全日本ZINEファンクラブ vol.28

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※この連載は福岡にある「ブックバーひつじが」店主のシモダヨウヘイさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月10日(シモダさん)・25日(チヒロ)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら

 

ブックバーひつじが シモダさま

先日は文学フリマ大阪でお会いできて嬉しかったです。翌日にもシカクさんでばったり遭遇できて、なんだか縁を感じました。

なんか、まだ行ったことのないシカクの扉を開けた瞬間、シモダさんの後ろ姿が見えるのを予想してたんですよね。会えた瞬間、驚くことも忘れてすんなり受け入れてました、現実を。会えて嬉しかったのに思ったほど嬉しそうには見えなかったとしたら、予知してたからですきっと。

シモダさんが大量にZINEを仕入れているところに遭遇し、今後の連載のネタバレになってしまう気がしてタイトルを見ないよう、目を伏せていました。

遠征してイベントに出るのも、ひとりで出店するのもだいぶハードル高いですよね…!事前に気になる出店者の方を調べたり、「あの人出るんだ!挨拶行こ」とか思いつつもひとりゆえ、なかなか余裕もなく…。

そんな中でも、自分を知ってくれている方やここで出店したからこそ会えた方との出会いがあると、また出たいなって思えますよね。

次はどこかの文フリで出店ご一緒できる時は、隣同士になれたらいいですね。おっしゃる通り、ひとり出店は買い物行くのも休憩出るのも骨が折れますし、なにより知り合いがいると心強いし楽しい!いつかぜひ実現しましょう。

 

今回は文フリ遠征でまわった本屋さんで見つけた作品をご紹介します。

 

『キッチンドランカーの本 煮物とワイン』仔鹿・紫都香

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大阪へ向かう途中、神戸の1003さんで見つけたZINEです。こちらはワインと料理のワークショップをもとに作られたもの。京都のワインショップの仔鹿さんと、大阪でオオノ食材店を営む紫都香(しずか)さんの対話形式で書き起こされていて、読むだけで同じワークショップを疑似体験できます。

仔鹿さんが試飲の最中に参加者の皆さんにどんな味だったかをメモするように促すのですが、味わいを語ることへのハードルを下げようとされているのが印象的でした。自分の感覚を信じて、どう感じてもいいのだと言われているようで。

率直な感想を言うのが憚られる雰囲気ってあるじゃないですか。特に味覚に関しては。いや、味覚以外もだいたいそうか。かくいうわたしもおそるおそる書きがちですし。でもほんとうは専門家じゃなくても、うまい感想を言えなくても、どう語ってもいいんですよねぇ。

ごはん担当の紫都香さんが、苦手な赤ワインを「タイヤのゴムの味」と評していて、「そんな感じでいいんだ!」と驚きました。

読んでいる最中、掲載されている野菜の煮込みレシピを試しましたが、ちょっとしたひとてまで、ふだんより丁寧な味わいになったのも嬉しかったです。

 

『たいやきやいた』

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夏休みの自由研究のような雰囲気のZINE。色画用紙に手作りのハンコを押しただけという、のびのびとした装丁がいいですね。

こちらはシカクさんで買ったもの。完売していたのをサンプル購入させていただきました。いやー、シカクさんでしか出会えないような作品!

通算800匹以上ものたい焼きを自宅で作るほど、たい焼き作りにどハマりしたお母さんへインタビューした記録なのですが、凝り性っぷりがたまりません。

13年前に買った天然物(1匹ずつ焼くタイプを天然と呼ぶそうです)のたい焼き機で焼き続け、試行錯誤を繰り返した記録が載っています。好みの味、食感にたどり着くまでの考察や変遷がおもしろくて。ひとつのことを追求する姿勢が好きなんですよね。

 

『ものとかたり 辰雄とイチ子』

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こちらは大阪のFOLK old bookstoreで見つけたもの。

「ものの記憶を語り継ぐこと」をテーマに活動されている「ものとかたり」さんの作品。もちぬしが居なくなった思い出の品と、それにまつわる聞き語りで構成されています。

両親の遺品整理を機に活動を始めた「ものとかたり」さん。保管できる場所はないけれど、処分するには忍びないような物語を持った遺品たち。ものにお別れを告げる前に写真を撮り、他者に思い出を語る行為を通じて、残されたものの心の整理ができることに気づいたとのこと。その記録を本にすることで、亡くなった人の記憶も残せて、こうして他者と共有できるというか。なんだか昔のクウネルみたいだなと感じました。市井の人の生活をのぞくというか。

「遺品整理」と聞くと、残されたものの気苦労がクローズアップされますが、この方のように処分する前にものたちを撮影し、そこに潜む歴史を本という形で残すという、個人としての生活者の記録を保存することは社会的意義が大きいのではないかという気がしています。少なくとも自分にとってはですけど。

わたしはやっぱり、なにかを残そうとされている人が好きなんだなと、この本を読みながら実感しました。

 

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この数年間、ずっとやってみたかった自由律俳句集を作りました。

その日のあかり チヒロ かもめと街 街歩き エッセイスト 日記 zine 自由律俳句

この2年、日記という形式で日々のほとんどを書き残していましたが、今度は逆にその日常をたった1行1句だけで切り取ってみたくなって。いわば日記のスクラップブックのようなかたちです。まちの風景や、日常で起きたことをぎゅっと濃縮させたというか。

ZINEのデザインは最近はすべてプロの方にお手伝いいただいていたのですが、今回は完全に自分ひとりでやりたくて。たまにリセットしたくなるんですよね、そんなのたいへんなのは目に見えて分かっているのに。

「今、出したい」というスピードで欲求のままに行動してみようかと。エッセイとか日記が好きな人には手に取ってもらえないかもなと思い、ビビりながら小部数だけ印刷し、イベントで手売りすることにしました。

ひとつのことを突き詰めるのも素晴らしいけれど、あれこれ寄り道するのもきっといつか役に立つ。そう言い聞かせています。

なんだかそういうのが久しぶりに楽しいなって思えたのは、わたしのまわりの人たちがやりたいことをどんどん形にする人ばかりになってきたからなのかもしれません。

新しいことを始める人のパワーって、本人にその気はなかったとしても、知らぬ間に周りの人にいい影響を与えるんですよね。きっとシモダさんがあれこれ挑戦されているのを見て励みにされている方も多いはず。

 

今年に入り、ブログを始めた頃の友人が「KAZENONE BOOK」という間借り本屋さんを始めました。彼女にとってはこの数年ずっと本屋がやりたくて悶々としていたそうなのですが、間借り本屋さんとしての活動を始めてすごいな!と思ってたら、「街を盛り上げたいから」と本をテーマにしたイベントを立ち上げていて。

尾久はじまりの本市 荒川区 本 イベント 週末 9月 読書 

せっかく初回のイベントに誘っていただいたので、なにはともあれ出店を決めました。よく考えたら文フリ以外で出るの初めて…! 新刊の販売の準備を進めている期間って楽しさと期待と不安でいっぱいですよね。ぜんぜん慣れない。でもきっと楽しくなるはず、そう思うしかありません!

来月末は福岡の文フリですね!シモダさんの新刊、無事に完成しますように。

かもめと街 チヒロ

 

次回の更新は「ブックバーひつじが」シモダさんです。(10/10公開予定)

 

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